東京家庭裁判所 昭和35年(家)5481号 審判 1960年6月16日
申立人 鳥山スエ(仮名)
主文
本籍長野県埴科郡戸倉町大字羽尾○○○○番地筆頭者島谷スエの戸籍中、同籍幸代並びに三時の父母欄中、父の氏名「亡島谷昇」とあるを「小林己作」と訂正し、続柄「長女」とあるを「女」と、「二男」とあるを「男」とそれぞれ訂正し、身分事項欄中、出生事項を消除して、本籍福島県安達郡岩代町大字○○字○○九番地筆頭者小林己作の戸籍中、同籍幸代、並びに三時の身分事項欄から、出生事項を移記する。
ことを許可する。
理由
一、島谷幸代及び島谷三時は父小林己作母申立人鳥本スエ間に出生した子であるが、当時母スエは亡島谷昇と婚姻中であつたため、父小林己作において、その妻タノとの間の嫡出子として虚偽の出生届をしたものである。
一、その後生母鳥本スエの申立により、幸代、三時と小林タノとの間に親子関係の存在しない旨の確定審判をうけたので昭和三十四年八月三十一日筆頭者小林己作の戸籍上その旨訂正せられたものであるが、それとともに昭和三十五年二月八日生母鳥本スエより新に右両子の出生届がなされたところ、子の出生当時鳥本スエは島谷昇と婚姻中であつたため、同人の子としての推定をうけた結果、父亡島谷昇母鳥本スエの長女、二男として夫々筆頭者鳥谷スエの戸籍に登載せられたものである。
一、しかしながら申立人は戸籍上父と推定された島谷昇と昭和十六年五、六月来離別し、その後小林己作と通じたものであるから、昭和十七年十一月以降に出生した子二人はいずれも島谷昇の子でありえないわけである。
一、尤も幸代、三時は母の婚姻中に分娩された子であるから、それが母の夫の子であることを否定するには嫡出否認の裁判によるべきであるけれども、右子の懐姙については夫出征、離別中に係るものであるから橋出推定をうける場合でないと思料される。従つて前記子二名とその戸籍上の父との親子関係の否定は、必ずしも嫡出否認による必要なく、父子関係不存在の裁判により実体法上否定はできるし、更に単に戸籍訂正のためであれば、戸籍法一一三条の戸籍訂正の手続によつても処理されるものと解される。
一、右の次第であるから、幸代、三時の戸籍についてはその父欄を消除すると共に同子について、いずれも先きに父小林己作において嫡出子出生届を提出している事情に鑑み父の認知があつたものとして主文の如く訂正するについてこれを許容するを相当とする。
(家事審判官 村崎満)